
岡山県美作(みまさか)市は、県の北東部にあり兵庫県や鳥取県に隣接する町です。
この辺りは、古くは平安時代に編まれた『続日本書紀』にも登場する美作国(みまさかのくに)の一部です。
人口は県内で最も少ない市ですが、それだけに他では味わえないのんびりとして大らかな風土の特徴ある「歴史、スポーツ、温泉の町」を作り上げています。
美作市 大原
江戸の宿場町の面影が残る時代劇セットのような町
古くから鳥取(因幡)から姫路(播磨)までを結んできた因幡街道。大原宿(おおはらしゅく)・古町周辺はその宿場町として発展してきました。鳥取藩主池田候が参勤交代の際に利用した「本陣」や「脇本陣」の遺構や江戸時代後期から明治・大正期の町屋が残り、当時の宿場町の景観を今なお残しています。
- (写真左) 車を降りて散策。山水が往時と変わらず水路に流れています。昭和61年に岡山県から「町並み保存地区」に指定されているほか、「おかやま歴史の旅百選」「新日本歩く道紀行100選」にも認定されています。
- (写真中)数奇屋作りの御殿と御成門が今なお、その姿をとどめている「本陣」。約200年前の姿を残している本陣は稀少。
- (写真右)「脇本陣」は、大名や幕府の重臣が本陣に泊まるとき、家老や奉行の宿舎となった建物です。
美作市 武蔵
稀代の剣豪、宮本武蔵 そのルーツと秘密をたどる
「二刀流」「巌流島の決闘」と言えば、ご存知『宮本武蔵』。美作国宮本村(現美作市宮本)で生まれ、16歳までをこの地で過ごしたと言われています。「武蔵の里」は、宮本武蔵生誕伝承地エリアの名称で、旧所、名所、顕彰施設が点在しています。「たけぞう」と呼ばれた幼少青年期の物語の絵本石碑もあり親子で楽しめます。
- (写真左)武蔵の里「五輪坊」の敷地内には、高さ5.5mの若き日の武蔵像がありました。凛々しい17歳の頃の武蔵です。
- (写真中)上部中央に向かって湾曲しているユニークな外観の「武蔵武道館」。武蔵自作の『海鼠透鍔(なまこすかしつば)』をモチーフにデザインされています。
- (写真右)「武蔵の里」内の宿泊施設「五輪坊」に併設された「武蔵資料館」。NHK大河ドラマ『宮本武蔵』で使用された衣装や直筆の書、自作のつばなど150点が展示されています。
- (写真左) 「五輪坊」の回遊式日本庭園。
- (写真中)全国でも珍しい人名を使った智頭急行「宮本武蔵駅」。
- (写真右)宮本川の対岸に見えるのは、「宮本武蔵生家跡」。
奈義町
那岐山の大自然のもと 文化と芸術が未来に向けて融合
岡山県勝田郡奈義町は、美作市の北西に隣接する小さな町です。標高1,255mの那岐山の麓にあり、自然に恵まれ『農村リゾート』とも呼ばれ、様々な農業体験もできる町としても知られています。
そんな町に突如現れる巨大なアートミュージアム。思わず“なんで?”の言葉が口をついて出てきます。「奈義町立現代美術館」は、わが国を代表する世界的な建築家 磯崎新氏設計によるもので、氏のプロデュースのもと3組のアーティストへ作品を依頼し、その作品や全体の空間を作家と建築家が話合い、作品と建物とが半永久的に一体化した美術館で平成6年完成時には世界初の試みでした。ここに来ると自然や文化、芸術を大切にするという町の思いが伝わってきます。
- 奈義町立現代美術館」は、太陽、月、大地と名付けられた、外部からも明らかに認知出来るような形の3つの展示室から構成されています。写真は展示室「太陽」にある荒川修作&マドリン・ギンズによる<偏在の場・奈義の龍安寺・建築する身体>。外から見える筒状の建物の内部です。水平なところが一つもなく不思議な感覚にとらわれます。
- (写真左)那岐山を背景に美術館そのものがアートになっています。
- (写真中)こちらは展示室「大地」にある宮脇愛子による<うつろひ>。水と石で大地を表現。ワイヤで自然の変化、時間の変化を表現。石の空間を歩くと、わずかな振動でワイヤが揺れ動きアートとの一体感を楽しめます。
- (写真右)展示室「月」の岡崎和郎による<HISASHI-補遺するもの>。日本の家をイメージしたこの部屋は、少しでも音を立てると部屋中に響き渡り、静寂と響の落差に驚かされます。
- (写真左)難しいアートの世界を優しく教えてくださった学芸員の遠山健一朗さん。
- (写真中)美術館と併設する「奈義町立図書館」。明るい日差しが差し込みどことなくアートな空間です。こちらの設計も磯崎新氏によるものです。
- (写真右)池に面した喫茶室からは、太陽、月、大地の展示室と同時に、借景となっている秀峰那岐山を望むことができます。
- (写真左)美術館前の那岐山に続く道。まっすぐで交通量も少なく気持ちの良いドライブが楽しめます。
- (写真中・右)美術館から車で7.8分山道を登ると「那岐山麓 山の駅」があります。アルプスの民家をイメージした木造2階建で、中には特産品ショップ、レストランがありますが、こちらの特徴は、那岐の自然を満喫しながら様々な手作り体験や農業体験ができること。研修室やコテージも充実した滞在型のリーゾートスポットです。
美作市 勝田
『遊びごころ』が思わず飛び出す 大自然の中の別天地
美作市の北部、鳥取県の県境の山あいにある「勝田エリア」。梶並川の源流に近いこのエリアには、日常から心も体も思いっきり解放してくれる施設が充実しています。石積みで整備された渓流公園ではアマゴやニジマスなどの放流釣りやつかみどりが一年中楽しめます。また冒険をテーマにしたアスレチック場(トム・ソーヤ冒険村)屋内丸ごとアスレチックになっている「村の学校」もあります。遊び足らないならコテージ村もあり宿泊もできます。大自然の中で時間が経つのを忘れて、『遊び』を心ゆくまで堪能できます。
- 「右手(うて)養魚センター」は、津谷渓流公園の中にある養魚センターです。川の中に石積みをして流れをゆるめた自然のいけすに魚を放流します。道具一式も貸し出ししているので手ぶらで大丈夫。さあ渓流釣りに挑戦です。
- (写真左)この時の餌はなんと贅沢!いくらでした。少し手間取りましたが、二人とも初めての釣り大成功!ニジマスとヒラメ(アマゴのことです)を釣り上げ大満足。
- (写真中左)釣り上げた魚はセンターで塩焼きにしてくれます(1匹80円)。
- (写真中右)公園内のコテージ村。
- (写真右)養魚センターからほど近い「共和林業」さんを訪ねました。社長の小椋浩之介さんの許可を得て「水車」を見せていただきました。梶並川から取水した水で直径4.6mの巨大な水車を動かしオギノコを駆動させ製材します。この水車は4代目で、90年前から動いていて、日本で現存するのはこの1台だけだそうです。
美作市 湯郷
びっくり玉手箱のような 温泉だけじゃない温泉街
美作地方には奥津温泉、湯原温泉、湯郷温泉があり、総称して『美作三湯』。全国に名をはせるお湯どころです。「湯郷温泉」は吉井川の支流吉野川の北岸にあり、平安時代に一羽の白鷺に導かれた高僧・円仁法師が発見したと伝えられています。お湯の素晴らしさはもちろんですが、じっくり探索すると大人も子供も楽しめるびっくりするスポットが点在していて、さながら『おもちゃの街』のような感じのエリアです。
- (写真左)「てつどう模型館&レトロおもちゃ館」には、温泉街をテーマにした鉄道模型のジオラマがあり、美作湯郷を走る線路「姫新線」を再現した汽車も走っています。最長8.4mのレールをレンタルし自分の列車を走らせたり、貸しプラレールで遊ぶこともできます(有料)。
- (写真中・右)「現代玩具博物館・オルゴール夢館」内には、1世紀以上前のアンティークオルゴールが約30点、海外の木製玩具が約600点展示。
- (写真左・中)温泉街の奥にある「あの日のおもちゃ館 昭和館」では、ブリキのおもちゃ、蓄音機、少年マンガなど、大正から昭和30年頃までの懐かしいグッズを約2万点以上、所狭しと展示されています。昭和30年頃の小学校の教室や台所、理容室なども再現され、細い迷路のように並んだ展示物もあり、すべて館長一代で取集したとは驚きです。
- (写真右)温泉街の入口付近にある巨大な「湯郷温泉からくり時計」は、高さ7.9m、幅4.3m。岡山県に伝わる巨人伝説「さんぶ太郎」のモニュメントです。屋根を持ち上げた時の高さは約9mにもなります。
- (写真左)「季譜の里」でお借りした浴衣で湯郷温泉夜のお散歩。
- (写真中)吉野川にかかる「ゆ〜らぎ橋」の中央から毎時50分から20分間、羽ばたく白鷺を模した高さ15mの大噴水が上がります。ライトアップされた夜の噴水は幻想的です。
- (写真右)美人の湯として名高い湯郷温泉の女将の会から生まれた「湯郷温泉いちごぷりん」。ビタミンCたっぷりな美作産のいちごにこだわった逸品(95g 480円(税込))。
- (写真左)湯郷温泉街の南側を流れる吉野川の川土手に作られた市営の温泉露天風呂。柵は少し低いですが、のどかな雰囲気は他では味わえません。
- (写真中)温泉街で見つけたお洒落なお店「ドットカフェ」。シンプルでモダンなインテリアと心地よい音楽が落ち着きます。
- (写真右)マンゴースムージー650円、ベリーベリースムージー650円、大人のチョコレートケーキ500円、ベイクドチーズケーキ500円。
三拍子揃った色とりどりの新鮮な食材 温かい和の空間でいただく 心打たれる温泉宿の心づくし
- (写真左)自家製白酒から始まる『贅の御膳』(5月末まで)。菜の花昆布〆や黒豆寄席などの前菜、伊勢海老をメインとした造里、蓋物には百合根や桜蒸し、瀬戸内の春魚と山菜のほうば焼きなど、次々に出されるたびに感動します。 (贅の御膳プラン:2名1室和室お一人25,300円税別)
- (写真中)千屋牛ロース石焼は特製味噌につけていただきます。
- (写真右)「ほうば焼きの蓋を開けるのは、火が小さくなってからよ」と優しく教えてくださった女将の佐々木裕子さん。
- (写真左)温泉街の中心に建つ「季譜の里」は、平成14年に改装したばかり。
- (写真中左)木々や花が美しい中庭を歩くと気持ちが穏やかになります。
- (写真中右)庭園を眺めながらの石畳の露天風呂「白梅の湯」。
- (写真右)「花を楽しむ、なごみの宿」の思いが伝わる、随所に野花の生花が。
石畳のエントランスを抜けると木の温もりと清々しい空気。目の前には色鮮やかに彩られた野花の生花。日常を一瞬で忘れさせてくれるこちらは「湯郷温泉 季譜の里」さん。純和風のお宿は全館畳敷きのフロア。靴を脱いで素足で一歩踏み入れると足の裏から懐かしい感覚が蘇ります。瀬戸内海と日本海の真ん中にあり、日本海の幸、瀬戸内海の幸、山里の幸と、四季折々の旬の食材がいつでもふんだん。手間暇かけた三拍子そろったお料理に感動しないわけにはいきませんでした。
湯郷温泉 季譜の里
住所/岡山県美作市湯郷180
お問合せ/0868-72-1523
※料金等は直接お問い合わせください。
心踊る!国際サーキット走行。思わず唸る!一流グルメ
- (写真左)クラブハウスラウンジのレストランでランチブッフェをいただきました。
- (写真中・右)若鶏と牛窓マッシュルームのクリーム煮やエビとワカサギのエスカベッシュなど本格フレンチが出来立てで。
- (写真左)「本物のサーキットには本物の料理を」と、料理長の里野モミイチさん。
湯郷温泉へお出かけの際に是非立ち寄っていただきたいのが、「岡山国際サーキット」。F1パシフィックGPなど国際レースを開催した国際級サーキット場です。通常営業日(レースやイベント開催日以外)は、アマチュアライダーやドライバーによる練習走行やスポーツ走行を見学できます。自分の車での走行もできると言うので早速体験!ペースカーが先導してくれるので『興奮』を気軽に楽しみました。