
銀の歴史が蘇る史跡と文化を訪ねてー
世界遺産「石見銀山」の町、島根県大田(おおだ)市へ
世界に評価された鉱山遺跡。遠い昔の世界経済や文化交流に思いを馳せる。
石見銀山(いわみぎんざん)は、島根県大田市にある、戦国時代後期から江戸時代前期にかけて最盛期を迎えた日本最大の銀山(現在は閉山)です。1526年に銀色に光る仙の山(標高537m)が発見されて以来、最盛期に日本は世界の銀の約3分の1を産出したとも言われています。16世紀頃は、日本の銀山としてヨーロッパ人に唯一知られた存在でした。環境に配慮し、自然と共生した鉱山経営をしたことで、2007年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」として世界遺産に登録されました。
その歴史と文化を見たくて、早速訪ねたのが「石見銀山世界遺産センター」。こちらでは、銀鉱山の遺構や技術を映像やジオラマで紹介しているので、現地に行く前には必ず立ち寄る事をお勧めします。展示された30kgの銀の塊を実際に持つ事もできます。
人・伝統・歴史に触れるとどこか懐かしい思いにとらわれる。
世界遺産センターから石見銀山公園に向かい、鉱山を流れる銀山川に沿って遊歩道をのんびり上ると寺谷神社や旅人が休憩出来る茶屋がいくつもありました。途中わきに少し入った所に映画のセットにでも出てきそうな立派な石垣が何段にも連なっている場所があります。ここが、「清水谷(しみずだに)製錬所跡」です。案内板の当時の写真を見ると、石垣の上に沢山の建物があった事が分ります。ただこの製錬所、明治28年に建設されたのですが、その頃には鉱石の質が良くなく、また設備の能力不足などで不採算になりわずか2年で操業を停止したそうです。
さらに歩くと「石見銀山 龍源寺間歩」に到着。間歩(まぶ)とは、銀鉱山を採掘する為の坑道の事でこの鉱山独特の呼び名です。全部で600以上あるそうです。龍源寺間歩は大久保間歩に次ぐ長さで、中に入って見学する事ができ、内部はノミで掘った跡が当時のままの状態で残っています。
銀山ふもとには、武家屋敷や商家など様々な身分の江戸時代の面影を残す建物が混在しているのが特徴の「大森」。古民家を活かしたショップやカフェもあり、ぶらり歩きを飽きさせません。
澄んだ空気と暖かいおもてなし、絶品地元フードで心も体も癒す「三瓶山」。
国立公園三瓶山(さんべさん)は、島根県のほぼ中央に位置する火山です。主峰・男三瓶(1126m)をはじめ、女三瓶、子三瓶、孫三瓶、太平山などの峰が火口を囲んで環状に配列しています。一帯は自然に囲まれ、絶好のアウトドアフィールドが広がり、また地産地消にこだわった食のお店などが点在しています。「三瓶自然館サヒメル」では、島根の自然を標本とパネルで紹介しています。4000年前の三瓶山の谷筋から出土した埋没林を現地から移送して展示してあり、太古の自然の雄大さに触れ、しばし見とれました。
「温泉津」と書いて「ゆのつ」と読む町。湯治場でほっこり堪能する。
石見銀山の外港として栄えた「温泉津」は、かつては沢山の廻船問屋が軒を連ねた港町です。風情あふれる町並みには今も老舗の温泉宿が建ち並び、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。車一台通れるくらいの幅の道を歩くと、ひときわ目を引くレトロ調で洋風建築物の震湯(しんゆ)・薬師湯(湯元)がありました。地下2~3mの岩の間から湧き出る自然湧出の温泉です。温度が約46℃と少し熱めですが、これも源泉掛け流しの醍醐味と納得の温泉でした。
旅の終わりは「知る」「見る」「体験」で感動。
仁摩地区へ車を走らせ「仁摩サンドミュージアム」へ。大小6基の総ガラス張りのピラミッド状の建物がひと際目を引きます。中に入ると、高さ5.2m、直径1mの巨大砂時計にビックリ。約1トンの砂が365日かけてゆっくり落下するのだそうです。最後にどうしてもシロイルカに会いたくて、さらに西へ。浜田市に入ってすぐ国道9号線沿の「島根県立 しまね海洋館AQUAS(アクアス)」に到着。TVCMでお馴染みになった「幸せのバブルリング」®や「幸せの魔法マジックリング」を見て、そのかわいい仕草に心が和みました。
満足を超えた満足を知る地元食材のごちそう
今回の旅のお宿の輝雲荘さんで、夕食をご馳走になりました。これでもかと出していただく会席料理の一品一品は、地元産にこだわる料理長の意気込みが伝わってくるようで、味はもちろん、心遣いに大満足でした。
輝雲荘さんは、温泉津温泉で唯一露天風呂を備えた旅館です。ホールや廊下は畳敷きで、素足で歩くと、とってもいい気持ちでした。女将さんの朴慶順(パクキョンスン)さんは、20年前に結婚し日本へ来られたとのことですが、気さくでおもてなしの気持ちの良い方でした。料理は、地元で水揚げされた日本海の幸を中心とした料理長おまかせ会席と和牛ステーキ付会席をいただきました。
写真:「料理長おまかせ会席」烏賊素麺から始まり、牛タン貝割巻、茶碗蒸し、炙り中トロ、鯛の塩焼き、鮑ソテー、米茄子葛煮、和牛陶板焼きなど全13種もの逸品を堪能し温泉で癒された体は満足以上を連発していました。島根和牛のステーキを中心とした「和牛ステーキ付会席」は、旨味たっぷりのローストビーフも付きます。(どちらも通常料金に3000円~4000円増し)
輝雲荘
●住所/島根県大田市温泉津町温泉津ロ202-1
●お問い合わせ/0855-65-2008
●料金/1泊2食付 10,950円~(休前日はプラス1080円)
大自然の中で、ジューシーをほおばる
三瓶山に地元食材たっぷりの名物ご当地バーガーがあると聞き、三瓶山高原道路をドライブして着いたのが「三瓶バーガー」さん。お洒落なログハウスのハンバーガー屋さんです。三瓶山をイメージしたと言う白ごまがのったバンズに、島根産の牛肉と豚肉のパテ、さらに地元農家から仕入れたフレッシュな野菜をはさんだ、とってもジューシーで歯ごたえのあるしっかりした食感のバーガーです。数に限りがあり売り切れの場合があるので、事前に確認しておくのが賢明です。(写真は三瓶バーガー 600円(左)、トマトバーガー 650円(右))
三瓶バーガー
●住所/島根県大田市三瓶町多根1125-2 三瓶自然館サヒメル前
●お問い合わせ/0854-86-0200
●営業時間/10:00~17:00
●定休日/火曜日、年末年始
やっぱりあった!道の駅に美味いものあり!
この地の箱寿司は、石見銀山が天領の頃、江戸からやってきた代官の奥方が江戸の味や風習を懐かしんで作られた事が始まりと言われています。木の枠の中に酢飯、かんぴょう、椎茸、人参、油揚げなどの具を敷き詰め、それを数段積み重ね、仕上げに錦糸たまごをのせて軽く押しをします。口の中に入れるとふわふわした食感と甘酸っぱい食材がいっぺんに広がります。作り立てを食べさせて頂けるのが、道の駅「ロード銀山」。この地に伝わる三瓶高原産の「三瓶そば」も味わって頂きたい逸品です。(写真は割子そば、箱寿司単品)