
山陰最大の人口を擁する島根県松江市。城下町ならではの風情や風流が漂う町ですが少し足を伸ばし、あるいは町をぶらぶら歩くと知らなかった松江が見えてきます。今回はそんな松江の魅力をご紹介します。
のどかで穏やかな空気が流れる、水とともに生きてきた町
松江市は、島根県の東部(出雲地方)に位置する町。中心には、汽水湖である宍道湖(しんじこ)と中海(なかうみ)、それをつなぐ大橋川や松江城を囲む堀川、北には日本海の美しい姿が今も残され、まさに『水の都』と呼ぶにふさわしい町です。この町のシンボルといえば「松江城」。平成27年に国宝に指定されています。慶長16年(1611年)築城された天守は、現存する全国12天守の一つです。高さ2mもある日本最大の木造の鯱(しゃちほこ)や宍道湖まで見渡せる天守からの眺めなど見所満載です。また松江は、京都、金沢と並び日本三大菓子・茶処としても知られ、茶大名として知られる松江藩主・松平治郷(不昧公)の影響と言われています。お城の北側の「塩見縄手」では、お堀端で最も江戸時代 の風情を楽しめます。
- (写真左)お城の周りには、堀川が巡らされ美しさをきわださせています。遊覧船で『堀川めぐり』も。
- (写真左中)入母屋破風の屋根は、羽を広げているようにも見え、別名『千鳥城』とも呼ばれています。
- (写真右中)「塩見縄手」から「明々庵」へ向かう「切り通しの道」は趣のある古道。
- (写真右)「明々庵」は、松平不昧公が作った茶室を主とする古庵。松江情緒がたっぷり。
湖畔に広がるアートの世界 自然美と造形美の融合を楽しむ
美しい湖面を湛える宍道湖ですが、そのハイライトは何と言っても沈む夕日の美しさ。日本一とも言われ、時が経つにつれ表情を変える美しさは絶景です。夕日の沈む方向には、出雲大社などがある神々の里出雲の地。湖面を射す陽の光は神々しくもあります。「白潟公園」から県立美術館前の湖畔一帯は絶好の夕日スポットです。この辺りの沖合は、朝ともなると何十艘もの『しじみ漁』の船で賑わう、朝の風物詩です。「島根県立美術館」は、水との調和をテーマにした美術館です。モネやクールベなどの絵画やロダンの彫刻も展示されています。こちらもおすすめ夕日スポットで、美術鑑賞後に是非。
- (写真左)宍道湖の湖畔の「岸公園」から夕日を眺めるとロマンチックな世界が目の前に広がる。
- (写真中)「島根県立美術館」の外観は、ゆるやかに水辺と連続し、かつ背後の山並みを切らないように高さを低く抑えています。
- (写真右)高い天井のエントランスロビーも湖畔側が一面ガラス張りで夕方には夕日鑑賞スポットになります。
- (写真左)外の芝生で『縁結びスポット』を発見!12匹の『宍道湖うさぎ』の内、湖から2番目のうさぎを西に見ながら触れると幸せが訪れるとか。さらにシジミをお供えすると効果UPだそうです。
- (写真中)しじみ漁は年中行われていますが、10月〜3月の手掻き漁は月・火・木・金曜日の朝7時から11時頃に見られます。
- (写真右)ぽっかり浮かぶ小さな島は「嫁ヶ島」。夕日に浮かぶシルエットは切り絵のように見えます。
モダンな町並みをぶらぶら散歩 昼とは違う松江に出会う
宵の松江。中心を流れる大橋川や京橋川に周辺からの灯が映り、町はモダンな都市へと変貌します。東本町から京店商店街へと進むと町が賑わい、昼とは違う表情を見せてくれます。散策していると先ず目に飛び込むのは綺麗にライトアップされたレトロモダンな建物「カラコロ工房」。昭和初期に建てられた旧日本銀行松江支店で今はお買い物や食事ができる施設になっています。京店商店街では、石畳をよく見て歩くとハート型の石が見つかります。近くの『紺屋小路通り』にも石畳に刻まれたハートが二つあり、観光客の自撮りスポットになっています。
- (写真左)カラコロ工房の建物が宵の町に浮かび上がり幻想的な雰囲気を漂わせています。
- (写真右)「カラコロ工房」のライトアップは毎日されていますが、ピンクリボン運動やアイリッシュフェスティバルなどの運動に合わせて色が変わります。
- (写真左)地階には旧日銀の金庫を利用した展示室がありました。
- (写真中)京町商店街で見つけたピンクのハートの石。これは恋愛を意味するローズクォーツ。もう一つ万能を意味する水晶のハートの石もあります。探してみてください。
- (写真右)昼間と全く違う表情の松江。
海と神様と心を結ぶえびす様の故郷 聖なる岬はすべてがパワースポット
島根半島の東の端「美保関(みほのせき)」。北は日本海、南に美保湾と中海。三方を海に囲まれた美保関は、神話の時代から1日の出舟入船が1,000隻もあったと言われる江戸時代、そして今日まで神と共に暮らし海に生かされてきた『聖なる岬』です。豊かな海の恵み、自然を生かした漁港の恩恵を受けてきましました。港町に敷き詰めた「青石畳通り」。海の男たちが航海の目印にした「関の五本松」。世界の歴史的灯台百選に選ばれた「美保関灯台」など、“時を超えて守られてきた歴史と神秘の宝”の町です。
- (写真)「青石畳通り」を歩いているとレトロな旅館がありました。明治38年美保関で初めて本格的な旅館として開業した「美保館本館」。複雑に組んだ重厚な数寄屋造りで、当時の指物師や大工さんの高度な技術や遊び心を垣間見ることができます。現在は、結婚披露宴や講演会、コンサートなどにも利用されているそうです。
- (写真左)日本海を望む「美保関灯台」。灯台の高さは14m、海面からは83mあり、美保湾を隔てては大山、日本海側では遠く隠岐の島までも望めます。手前の建物は「灯台ビュフェ」でスイーツや食事が海を見ながら楽しめます。
- (写真右)のどかな美保関漁港にはアジやヤリイカ、サヨリなど豊富な魚が水揚げされます。
- (写真左)「美保神社」は、出雲大社に祀られる大国主命(大黒様)の子である『えびす様』の総本宮です。漁業、海運、商売、歌舞音曲の神様として日本中から信仰を集めています。「毎日朝の8時半と夕方3時半に行われる『巫女舞』は動きが大きく見ものです。」と松江観光協会の西垣祐一郎さん。
- (写真中)美保関灯台の裏手に鳥居があります。真下の海中に鎮座するのが「地の御前」。沖合3.6kmの小さな島に鎮座するのが「沖の御前」で、その昔えびす様が釣りを楽しんだと言われています。
- (写真右)積荷を運ぶために、海から切り出した青石を敷き詰めた石畳で、のちに多くの文人が歩いたその路は、未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選に選ばれ、「青石畳通り」として往時の面影を今に伝えています。
素敵な出会いと美肌を求めて 『神の湯』のある温泉の町へ
日本最古の温泉の一つとして知られる玉造温泉は松江市にあります。玉造の湯はその優れた効能から「神の湯」と称され、特に美肌作用に優れた泉質で女性からの人気も高く「美肌温泉」として親しまれています。最近では「玉作湯(たまつくりゆ)神社」が、願いを叶えるパワースポットとして女性に人気沸騰です。出雲神話のオブジェやユニークで面白い看板が随所にあり、街を歩くだけでも思わず愉快な気分にさせてくれます。玉造温泉の東には「八重垣神社」があります。神話で大蛇から姫を守ったロマンチックなヒーロー『素戔嗚尊(すさのおのみこと)』とヒロイン『稲田姫』を祀った神社ですが、こちらも縁の遅速を占う縁占いで話題です。
- (写真左)「玉作湯神社」は、勾玉(まがたま)の神様と温泉の神様を祀る神社。昔から信仰されている『願い石』があります。
- (写真左中)玉湯川には足湯がありました。
- (写真右中)『願い石』にお神水で清めた『叶い石』を当てて御力を吹き込み、叶い札に願いを書いて石と一緒に御守り袋へ。
- (写真右)『叶い石』を社務所でお授けいただく(600円)。
- (写真)「八重垣神社」では宮司の佐草敏邦さんのお話を聞いて早速境内の奥の『鏡の池』へ。硬貨を紙片に浮かべて早く沈む方が早く良縁に恵まれるそうです。
こころ和むふれあいに感動 湖畔に広がる花と鳥の楽園
宍道湖の中央北側ののどかな丘陵地に「松江フォーゲルパーク」があります。2つの鳥温室と花の展示室などがあり、屋根付きの回廊もあるので荒天気でも快適に見て回れます。年中満開のベゴニアやフクシアなど可憐な花が一面に咲き、また90種以上の世界中の鳥たちと触れあえる楽園です。
- (写真左)熱帯鳥温室では、かわいい5羽のペンギンがお出迎えしてくれました。仕草を見ているだけで童心になってしまいます。
- (写真中)受付を通ると天井一面から吊るされたベゴニアやフクシア。見たことのない大量の花の楽園です。
- (写真右)フクロウショーでは、普段目にすることのないフクロウに触れあえます。
現代の名工が作る和菓子のできたてをいただく
松江歴史館に入り畳敷きの受付を通ると展示室の手前に目が止まります。ケースに入った美しい盆栽や生け花。でも近づいてよく見るとこれらはすべて和菓子で作られたものなのです。松江和菓子の研究家で現代の名工・伊丹二夫氏作。café「きはる」では、氏による作りたての「創作生菓子」をいただけます。
- (写真左)大広間からは日本庭園を眺めながら休憩できます。
- (写真中)これが全部和菓子とは、ビックリ。
- 松江歴史館の展示を見てから和菓子をいただくのがオススメです。
お茶と和菓子「きはる」
住所/島根県松江市殿町279番地(松江歴史館内、入館無料)※松江歴史館は展示室のみ有料
お問合せ/0852-32-1607
営業時間/9:00~17:00(L.O.16:30)
定休日/毎月第3木曜日
料金/松江和菓子とお飲み物(抹茶、珈琲、りんごジュースのいずれか)800円
生きのいいのは海の幸だけではないご馳走
JR松江駅の北側の繁華街には、「島根県を明るくしたい」と、そんな思いを込めて店主が名付けた味処「明島」があります。奈良でお寿司屋さんを25年営み故郷の松江に帰ってきたそうです。とっても元気な店主やスタッフが用意する日本海の海の幸をたっぷり堪能しました。
- (写真左)暖簾をくぐって迎えてくれたのは、氷の上に並んだ新鮮な魚介類。日本海で獲れたばかりの天然物。写真手前の大きなお魚は、大ボッカと言い、大きなカサゴ。
- (写真中・右)のどぐろの煮付けはもちろん、島根和牛のローストビーフやアナゴの天ぷらも絶品。
明島(あきしま)
住所/島根県松江市伊勢宮町500-8
お問合せ/0852-28-2239
営業時間/11:30~13:30(火・水・木・金曜日のみ) 17:30~23:00(L.O.22:00)
定休日/月曜日
市民が愛するご当地グルメで心も体もホッカホカ
町を歩くと、いたるところで見かけるのが『おでん』の文字。実は人口当たりのおでん屋さんの数は全国トップクラスだそうです。一年中いただけるお店もいくつかあります。こちら「おでん庄助」もその一つ。昭和23年創業の松江おでんを代表するお店で、化学調味料を使わず手作りの伝統の味を守り続けています。
- (写真左)約40種類の具材を年中楽しめます。松江特産のアゴ(トビウオ)のすり身で作ったちくわや、季節の野菜を油揚げに詰め込んだ巾着、せりや春菊がそのまま具になっているものもあります。
- (写真右中)窓からは大橋川に浮かぶ街の明かりが。
- (写真右)赤提灯が手招きしていました。
おでん庄助
住所/島根県松江市八軒屋町16
お問合せ/0852-21-4238
営業時間/17:00~22:30
定休日/日曜日(祝日の月曜日)
看板に誘われるロードサイドの絶品海鮮料理
境水道沿いの県道2号線をドライブしていると突然ド派手な立て看板が。なにやら『うに』とか『生えび』とか『日本海』とか。否が応でも食欲がそそられます。創業50年の「まつや」は、『日本海の魚介類てんこもり!』がモットー。朝獲れ、鮮度抜群の魚貝類をそのままドドーンと出していただけます。ただし数量に限りがあるので少し早めの到着をオススメします。
- (写真左)自慢の『まつや定食』(税込2,700円)。松葉ガニ、うに、いくらなど約20種の魚貝類に圧倒されます。
- (写真左中)ボリューム満点の『海鮮丼』(税込1,296円)。こちらの丼でも14、5種類の具材があります。
- (写真右中)このボリューム伝わりますか。
- (写真右)赤お店の前に看板がズラリ。