
広島県福山市は、県内では広島市に次ぐ人口46万人の都市ですが、福山駅の南14kmの海岸沿いに江戸情緒をたっぷり残す素敵な港まちがあります。
ハンドルを握れば意外と近い「鞆の浦」。小さいまちですが、中身はとっても濃いまちです。
アニメ映画「崖の上のポニョ」は、宮崎駿監督がこの地に2ヶ月滞在し構想を練りました。モチーフとなった鞆の浦は、「阿藻珍味 鯛匠の郷」のギャラリー前から一望できます。静かな湾や代表的な建物が穏やかな表情を見せてくれます。
小さな港で見つけた思いがけない出会い。自分の中に隠れていたワクワクが飛び出す。
鞆の浦は、船が風と潮の流れを利用していた時代、潮の満ち引きを待つ船が集って“潮待ちの港””風待ちの港“として昔から栄え、瀬戸内の独特の文化を形成してきました。
万葉の時代から歴史に彩られた鞆の浦ですが、江戸時代には朝鮮通信使やシーボルト一行などが入港するなど先進的な国際都市の一面もありました。
また幕末には三条実朝ら七卿が寄港した場所、坂本龍馬が「いろは丸事件」の際に紀州藩と談判した場所としても知られています。
当時の“粋”や“趣”そして、穏やかな海と島々が織りなす景色は、どこか懐かしく優しい気持ちを思い出させてくれます。
時代を超えても失われない先人達の息吹が今も息づいています。
綺麗に並べられた石畳の小径、白かべの蔵、威風堂々とした常夜灯、江戸時代から残る格式のある商家など、車を降りて3時間もあれば回れます。
・・が、町のあちらこちらにある保命酒の蔵元で歴史に触れたり、瀬戸内のいりこを試食し、みたらし団子でお腹を満たし、郷土料理やスイーツに目移りしていたら時間はいくらあっても足りません。
- (写真左・中) 「保命酒(ほうめいしゅ)」は鞆町名産の味見酒(リキュール)です。桂皮など薬味十六種を味醂に漬け込みじっくり成分を浸出させます。別名「瀬戸内の養命酒」とも言われ、江戸時代から重宝にされてきました。写真左は江戸時代から続く「岡本亀太郎本店」右は現存の蔵で最古という「保命酒屋 鞆酒造」。
- (写真右).保命酒 180mℓ瓶 600円(税込)
- (写真左)江戸時代から続く「阿藻珍味」。広島では知らない人はいないほど有名です。ちくわの手作り体験もできます。
- (写真中)評判の看板娘(?) 玲子さんが元気に声をかけてくれます。「けんちゃんのいりこ屋」は瀬戸内の小魚の干物がいっぱい。
- (写真右)一見こわもて実はやさしい村上さんが焼いてくれた『みたらし団子』は、モッチモチ。「瀬戸内屋 大船幸太郎」。
- (写真左)「太田家住宅」は瀬戸内を代表する建造物群。主屋や保命酒醸造蔵など9棟からなり、江戸時代には参勤交代の宿でもありました。写真は「酒槽(ふね)」と「はね棒」。
- (写真中)鞆の浦は、TVの日曜劇場「流星ワゴン」で永田家の故郷としてロケされました。写真は、永田家(一雄の実家)として使われた建物で、やっぱりいい雰囲気があります。
- (写真右)江戸時代に建てられた蔵の中にある「いろは丸展示館」。1867年鞆沖で沈んだ海援隊の“いろは丸”の引き揚げ物や龍馬のかくれ部屋、沈没状況のジオラマ等が展示してあります。2階の龍馬の等身大フィギュアは必見です。
全く違った表情を見せる鞆の浦周辺。
楽しみが、感動が、爽快感が2乗で広がる。
鞆の浦から湾を見ると、朱塗りの弁天堂が目を引く「弁天島」とその後ろに妊婦さんが横たわっているように見える「仙酔島」が目に飛び込んできます。「仙酔島」は、今から6,000〜8,000万年前に大規模な火山活動でできたと言われています。その為島には火山灰でできた岩や溶岩で特色ある自然が残っています。市営渡船場から5分で渡れます。島に着いて海岸遊歩道を歩くと岸壁が層を成して色付いているのに気付くはず。黒・赤・青・黄・白と5色の地層が1キロにも渡って続いています。日本で唯一と言われる「五色岩」です。
鞆の浦を西に車を20分も走らせると、海の上に形の変わった大橋が見えてきます。沼隈町と内海町の田島を結ぶ「内海大橋」です。全長832mの内海大橋は、陸地側に大きな船を航行させるために、このような”くの字”型型になったそうです。橋を渡り田島の隣の横島まで足を伸ばし、切石山を登ると瀬戸内の大パノラマが広がっています。少し歩きますが、この爽快感は外せません!
- (写真左)建物も石畳の小径も江戸時代の名残があります。
- (写真中)鞆の浦から渡船“平成いろは丸”で5分の「仙酔島」へ。パワースポットだらけ!!
- (写真右)沼隈町から約500m先の内海(うつみ)町田島を結ぶ「内海大橋」は、なんと海の上で90度近くカーブしていました。
- (写真左1)趣のある石段がいたるところにあり、歩くだけで江戸風情を満喫。
- (写真左2)18世紀に建築されたという「太田家住宅」の主屋。写真は当時の面影を残す茶室と庭。
- (写真左3)田島のお隣の横島にある標高228mの「王城・切石山公園」からは、弓削島、因島、遠くには四国山脈も見えました。
- (写真右)渡船“平成いろは丸”
時空を超えて瀬戸内の美食が集合。
おもてなしとこだわりが伝わる。
龍馬が談判した町屋で舌鼓鞆の浦らしい「粋」を味わう
「いろは丸事件」の談判の場として使われた町屋を旅館として再生した「御舟宿いろは」。実は宮崎駿監督のデザイン画を元に改装されたもの。ステンドグラスや玉砂利の中庭やお洒落な調度品を眺めながら季節の一品を頂きました。最後はご飯に鯛漬けをのせて出汁を入れて「鯛茶漬け」でと渡辺祐右シェフに教わりました。
- 写真上)うずみ重膳(1,850円 税込)は、福山の郷土料理。豪華に見せないためにご飯の下にご馳走を隠したと言われます。世羅産コシヒカリの中に鯛そぼろや穴子が埋まっていました。鯛いろは漬け御膳(1,450円 税込)もおすすめです。
御舟宿いろは
住所/広島県福山市鞆町鞆670 お問合せ/084-982-1920 休業日/火曜日 営業時間/喫茶部 11:00~16:00
[宿泊料金]
夜朝食付き:一般19,000円
朝食付き:一般12,000円
歩き疲れたら、これ!優しい味の絶品ジェラート
「御舟屋いろは」の向かいにかわいいカフェを発見。
店頭のショーケースには、キウイ、蜜芋、ラムレーズン、ミルク、保命酒など地元の食材にこだわったジェラートがずらり。
今年3月にオープンしたばかりの「あずみ野IN鞆の浦」さん。この日は2階の落ち着いたテーブル席でゆったり味わいました。
- オーナーがこの味を探して、やっと地元の社会福祉法人にたどり着き作ってもらった抹茶、保銘酒、ピスタチオ(写真左から)のジェラートは、美味しさに優しさがブレンドしてあります。(お持ち帰りは50円引き)シングル 350円 ダブル550円
あずみ野IN鞆の浦
住所/広島県福山市鞆町鞆879-1 お問合せ/084-982-0966 営業日/木・金・土・日 営業時間/11:00〜17:00
瀬戸内の絶景と美食を体感!リゾートホテルでのランチ
今回のランチはちょっとエレガントに。と訪れたのは、今年の7月に誕生したばかりの「Erretegia(エレテギア)」です。名前はバスク語で「網焼き屋」の意味。美食で名高いバスク地方から来たシェフが、瀬戸内の豊かな食材を独創的な発想で料理していただけます。オープンキッチンでスタッフとの会話も人気です。
- 臨場感あふれる調理工程も楽しめます。今回いただいたランチは8,000円のコース(税・サ込み)/ピメント、秋野菜、鴨、黒大蒜、広島牛など(一例)※季節により内容が変わります。席数に限りがあるので必ずお問い合わせください。