
安芸の小京都を散策
平安時代からの時の流れを現代にまで残す安芸の小京都、竹原。
広島県竹原市は、平安時代に京都の下鴨神社の荘園として、江戸時代後期には製塩業、その後は酒造業で栄えた町です。今も江戸の建物や明治・大正・昭和の町並みが保存され「安芸の小京都」と呼ばれています。特に、JR竹原駅の北東に位置する「町並み保存地区」には、往時のままの姿で屋敷や由緒あるお寺が保存され、通りや小径は美しい石畳が敷き詰められています。このドライブコーナーでも、愛媛県の大洲、徳島県の脇町、広島県の鞆の浦など多くの「町並み保存地区」を訪ねましたが、石畳と建物が見事に調和した町並みは、抜きんでた素晴らしさを感じました。
安芸の小京都として栄えた竹原は、町文化も発展した地域です。これから迎えるひな祭りの時期には、「町並み保存地区」に軒を並べる商家に、代々受け継がれてきた雛人形が展示され、行き交う人々の目を楽しませてくれるそうです。2月11日(祝)3月21日(祝)の間は、「たけはら町並み雛めぐり」というイベントが催されます。町並みに加え、町文化に触れるには絶好の機会ですね。
見所豊富な町並み保存地区。 歴史だけでなく、工芸と人情にまで出会う。
「町並み保存地区」の見所をひとつずつ巡っていくと、竹原ならではの魅力にたくさん出会えます。まず訪ねたのは、酒造業270余年を誇る「竹鶴酒造(小笹屋酒の資料館)」です。江戸中期の古い蔵を改造し、酒器、酒造具などの資料を展示しているほか、竹鶴の試飲・販売も行っています。そして、竹細工の工芸品を販売している「竹楽」と竹細工工芸家の作品を展示販売している「竹原まちなみ竹工房」へ。竹原という地名通り、竹林が多いこの地では、竹を町おこしの資源に使おうとしているそうで、この2店では素晴らしい竹の工芸品やおもちゃに触れ、その可能性を感じました。また、この町の人情を感じさせてくれたのが「竹の茶屋 いっぷく」のご主人と奥様。竹原が初めての私たちに町の成り立ちなどを親切に教えてくださいました。この「竹の茶屋 いっぷく」では、熱くした瓦の上に鬼の顔に象った茶そばを乗せた名物の鬼瓦そば(1,000円)を出しています。ご主人同様、個性的な美味しさのそばです。是非、お試しください。
陽光きらめく海岸線をゆっくりドライブしながら巡る竹原ならではのひととき。
「町並み保存地区」を楽しんだ後は、海岸沿いを東へ。美しい瀬戸の景色沿いにドライブスポットを巡ります。このドライブコースは、JR呉線と平行に走り、南に瀬戸内海を挟み大崎上島、大三島が眺められます。東西に延びるコースなので、朝焼けと夕焼けのどちらも楽しめるでしょう。昼間は、燦々と注ぐ陽光が瀬戸の海を輝かせ、まぶしいほどです。
このコースで最初に立ち寄ったのは、象嵌法(ぞうがんほう)の第一人者にして世界的にも有名な陶芸家・今井政之氏の作品を展示している「今井政之展示館」です。この展示館は、今井氏自らが、郷里の海が見える丘に開設。作陶場と作品展示館が設けられています。展示館の作品は、見て楽しく面白い。しかし、それを創りあげている技法・技術は素晴らしい、の一言です。
ドライブの最後に、食卓の花とおとぎ話の花をゆっくりと愛でる。
ドライブコースの終着点は、JR忠海駅周辺の「アヲハタ(株)ジャム工場」と「かぐや姫美術館」です。「アヲハタ(株)ジャム工場」では、パンなどに欠かせないアヲハタ・ジャムの製造工程を見学できます。また、5名以上なら、ジャムづくりを体験できるので時間に余裕のある方は是非どうぞ。
「かぐや姫美術館」は、本立寺を美術館として使用しています。館内には、竹取物語にちなんだ作品や資料が並ぶほか、園山春二氏の招福アートが至る所に展示されています。展示されている作品も面白く興味深いのですが、一番のお勧めは案内して下さるご住職のかぐや姫ばなしです。
竹原のご馳走は、古典と創作と触れ合い。
酒蔵に漂うそばの香を楽しむ。
江戸末期に建てられた酒蔵の一角を改造した藤井酒造酒蔵交流館の奥に店を構える「酒蔵そば処 たにざき」は、手打ちそばと日本酒を楽しむお店。そばは更科風の洗練された味わいで、ざるならそば本来の風味を楽しめますが、このお店はそばつゆとダシがとても美味しく、熱々のおそばを頂くのもお勧めです。ダシも上品に仕上げられ、ほんのりゆずの香りが漂います。また、お勧めの日本酒が付く「ほろ酔いセット」なら、お酒、そば、焼き味噌などのお酒に合う肴が楽しめます。ドライブ途中では飲めませんが、是非一度腰を落ち着けて楽しみたいお店です。
酒蔵そば処 たにざき
●営業時間/電話にてご確認ください
●休店日/不定休
●お問い合せ先/0846-22-7131
●住所/竹原市本町3丁目4-14酒蔵交流館内
酒粕が生んだ、竹原のイタリアン。
竹原市中心地から東へ瀬戸内沿いを走ると、海辺の素晴らしく眺めの良い場所に「カフェホクストン」が建っています。この美しい風景を食事の一部としながら楽しむランチは、このお店に来て良かったと心から思わせてくれます。お料理は、瀬戸の魚介をふんだんに使ったイタリアン。隠し味に酒粕を使用した酒造の郷、竹原市ならではのオリジナルなイタリアンです。今回頂いたお料理の中で、この酒粕を使っていたのがパスタとリゾット。最初、そうとは知らずに口に運んでみると、魚介の濃厚な旨味がより濃く味わえました。不思議に思いもう一口。ほんのりと酒粕の香りが口に広がりました。酒粕を使ったイタリアンは想像外でしたが、これが本当に良く合っていて、濃厚だけれども酒粕のおかげでスッキリとした後味でした。一緒に出されたピザは、新鮮な魚介と美味しいトマトソースがクリスピーなピザ生地と一緒に、口の中で踊り出す!ほどの美味しさでした。
CAFE HOXTON(カフェホクストン)
●営業時間/11時〜ラストオーダー日没
●休店日/月曜日(祝日の場合は翌日)
●お問い合せ先/0846-24-2011
●住所/竹原市忠海長浜3丁目4-10
親子二代で笑顔は、四国の“おせったいの心”がルーツ。
夕食におじゃました「魚どころ磯っ子」は地魚を使ったお料理とオリジナルメニューが人気のお店。ご主人の出身地は高松市香川町とのこと。奥様も塩江出身。“おせったいの心”が創り出す居心地の良さは、まるで我が家に居るかのようでした。