
滋賀県のほぼ中央、琵琶湖の東岸にある「近江八幡市」を訪ねました。
古くから農業が栄えてきましたが、中世以降は陸上・湖上の要衝という地の利を得て多くのお城が築かれました。
信長の楽市楽座、秀吉の自由都市の思想に引き継がれ、近江商人の基礎が誕生した町でもあります。
乗ってよし、見てよし、食べてよし。訪れる人をあきさせない、あきないの町
近江八幡市は、1585年に18歳で領主に任ぜられた豊臣秀次が信長亡き後の安土城下の民を近江八幡に移し城下町を開きました。自由商業都市としての発展を目指し、楽市楽座を施行、城のお堀である八幡堀を琵琶湖とつないで往来する船を寄港させました。これが商いの町の始まりです。秀次没後天領となった近江八幡の街から天秤棒を担いで全国に行商に出かけます。北は北海道から南は、安南(ベトナム)やシャム(タイ)まで進出したと言うから驚きです。『買い手よし、売り手よし、世間よし』という三方よしの理念のもと、利益の追求だけでなく社会貢献の精神で活動してきました。こうした近江商人たちは形に残る財産だけでなく、その精神が今もこの町の隅々に息づいています。町歩きをしながら江戸時代末期から明治にかけて建てられた家々の「うだつ」や「見越しの松」を眺めると当時の豪商の心意気まで伝わってくるようです。
- (写真左)全国的にも珍しい瓦をテーマとした「かわらミュージアム」。館長の前田幸一郎さんに近江八幡の地場産業であった八幡瓦や瓦人形などを見せていただきました。
- (写真中)「歴史民俗資料館」では、近江商人の往時をしのぶ生活様式がそのまま保存されています。赤い壁はお客様をお迎えするためだそうです。
- (写真右)ヴォーリズ設計の「白雲館」の2階から見える“甍(いらか)の波”は、もう近江八幡でしか見られないそうです。
近江八幡を深く愛したヴォーリズ。
明治に来日した一人のアメリカ人が残した軌跡と精神
近江八幡に来て気がつくのが、異国情緒たっぷりの洋風建築物がいくつも目に付きます。これらの建築の設計を手掛けたのが、ウイリアム・メレル・ヴォーリズです。明治38年に県立商業学校の英語教師として来日し、キリスト教伝道動も行うとともに、「建物の風格は、人間と同じくその外見よりもむしろその内容にある」との信条で、全国に何と約1600に及ぶ建築設計に携わったことで知られています。この町にも20軒あまりが現存しています。
- (写真左)かつてヴォーリズ夫妻宅であった「一柳(ひとつやなぎ)記念館(通称ヴォーリズ記念館)」。夫妻ゆかりの品々が展示されています(要予約)。
- (写真右)こちらもヴォーリズ建築で、大正期に建てられた「旧八幡郵便局」。
- (写真左)市立八幡小学校。大正9年に田中松三郎氏の設計で建てられたものを一粒社ヴォーリズ設計事務所が改築したもの。
- (写真中)「メンターム資料館」では、1920年ヴォーリズが外皮用薬(現メンターム)の輸入販売を開始してからの歴史や当時の薬の包装デザインなどがわかります。
- (写真右)資料館の前、道を隔てた正面のポケットパークにヴォーリズの像が立っていました。
ほかでは味わえない豊かな水と緑。忘れかけていた優しい気持ちが自然に湧き上がる
町の中心にある「八幡堀」は、豊富秀次時代以降この城下町を大いに活気付けてきましたが、昭和40年代後半にはゴミやヘドロで溢れ埋め立てられようとしていました。しかし町の人の努力で見事に甦らせ国の重要文化的景観第1号にも指定されました。今では、昔の風情が残る場所として時代劇の撮影には欠かせない場所となっています。八幡堀の周りには、資料館や展示館、ヴォーリズ設計の建物や近江八幡ゆかりのお土産物屋さんが点在しています。車を置いてフラブラ散策すると他の観光地では味わえない優しい気持ちが溢れてきます。
- 近江八幡の町をゆっくり川面から眺められるのが「八幡堀巡り」。“和船あきんど号”で35分。白壁の土蔵が立ち並び、季節の木々(これからだと紅葉が美しいです)の中を行くと心が安らぎ、情緒あふれる景色に時間を忘れました。
- (写真左・中)近江八幡の街並みに溶け込むように佇む「和た与」さん。店主の小川与志和さんによるとでっち羊羹やういろ餅は、一本一本手作りしているそうです。
- (写真右中)「石畳の小路」この町の歴史的景観をイメージして作られた場所。中には、カフェや特産品店など5つのお店があります。
- (写真右)「石畳の小路」の中にある「逢茶(ほうさ) あまな」では、「和た与」で作られたでっち羊羹やういろ餅を新感覚で味わえます。(写真手前から“あつあつ揚げういろとプチソフト(500円)”“和た与のいっぷく(700円)” 。
- (写真左)市観光ボランティアガイド協会の平松清廣さんに「日牟禮(ひむれ)八幡宮」を案内していただきました。近江商人の絶大な信仰を集めていたそうです。
- (写真中・右)琵琶湖岸には“よし”の群生地が広がっています。その中を手漕ぎの和船でゆっくり80分舟に揺られていく「近江八幡水郷めぐり」。船頭さんの福永精吾郎さんは手漕ぎ60年のキャリア。11月は「よしの葉擦れ」の音が最高!
- (写真左)近江商人発祥の地であることを最も感じるのが「新町通り」。商家や白壁の土蔵の間を行くと明治時代に活躍した姿が偲ばれます。
- (写真中・右)信号の少ない湖岸道路を走っているとログハウス風のカフェを発見。琵琶湖の大パノラマを楽しめると人気の「シャーレ水ヶ浜」さん。お店の前の湖畔では、放し飼いしているアヒルが可愛い仕草で迎えてくれました。
- (写真左)琵琶湖国定公園の豊かな自然に包まれて佇む今回のお宿「休暇村近江八幡」さん。
- (写真中)日本三大和牛の一つ「近江牛」をメインにした懐石料理をいただきました。
- (写真右)近江牛の「鉄板焼き」「ローストビーフ」「すき焼き」「炙り寿司」などの『近江牛会席(12月11日まで1泊2食16,820円)』。「近江牛のすき焼き」に「松茸の土瓶蒸し」などを加えた『秋の京風懐石「匠」(同15,200円)』。
郷土料理
地元のおばあちゃんたちの 絶品郷土料理
享保年間より270年続く近江商人の店をそのまま生かした「郷土料理 喜兵衛」さんは、一度暖簾をくぐると古き良き日本のお屋敷の世界です。地元のおばあちゃんたちが丹精込めて作るお料理!家庭ではなかなか食べられなくなった鯉の筒煮は絶品です。
- 人気メニューの『喜兵衛膳』(税別2,500円)。鯉の煮付、鯉のあらい、黒毛和牛ロースト(100円増)のメインから一品を選んで。他に近江牛しゃぶ、赤こんにゃく、丁字麩・琵琶湖の小魚など
郷土料理 喜兵衛
住所/滋賀県近江八幡市新町1丁目8
お問合せ/0748-32-2045
営業時間/11:00~14:30(最終ご注文時間)
定休日/水曜日
近江牛
ちょっと贅沢な 直飼育の 近江牛ランチ
近江八幡といえば、何と言っても『近江牛』。こちらのお店「まるたけ近江西川」さんは、なんと直営牧場で飼育した近江牛を食べさせていただけます。昔ながらの味にこだわった近江牛は、濃厚ながら口に運ぶとすぐ溶けるような食感でした。
- 『近江牛 お昼の鉄板焼』(税込5,400円)。お昼には十分な120gの近江牛と、地元の野菜、サラダなど。満腹間違いなし。
まるたけ 近江西川
住所/滋賀県近江八幡市仲屋町16
お問合せ/0748-32-2336
営業時間/<平日>ランチ 11:00~15:30(L.O.15:00)、ディナー 17:00~21:00(L.O.20:00)
<土・日・祝日>11:00~21:00<オーダーストップ>(L.O.20:00)
休業日/火曜日
スイーツ
風や土、太陽と水に包まれたお菓子の王国
近江八幡市の郊外に、おとぎの国に迷い込んだような場所があります。広い駐車場で車を降りると、まず目に飛び込んでくるのが、屋根に芝がびっしり敷き詰められたお城?まるで絵本から出てきたような建物は、近江八幡の地で140年以上もの歴史ある和菓子屋“たねやグループ”がオープンさせた「ラ コリーナ近江八幡」という和・洋菓子を販売するショップです。建物の中に入ると、甘い香り!いたるところに工房があり一面ガラス張りなのでバームクーヘンやサブレの焼きあがる工程を見ているだけで楽しくなります。”ラ コリーナ(La Collina)”とはイタリア語で”丘”という意味。自然の中でお菓子を!の思いが伝わってきます。敷地内にはパンやギフトショップがある『コンテナショップ』や『カステラショップ』『カフェ』などもあり、大好きな時間をゆっくり楽しめます。
- (写真左)この素敵な建物の中に、お菓子がいっぱい!
- (写真右)こちらはメインショップの『クラブハリエ』。“焼きたてバームクーヘン”(税込648円)は、とにかくフワッフワ。
- (写真左)焼きたてのバームクーヘンがいただける「メインショップカフェ」。
- (写真中)「カステラショップ」では、店長の宮川あゆみさんにお話を伺いました。
- (写真右)「カステラショップ」の中にある「カフェ」の“焼きたて八幡カステラセット(税込885円)”。スプーンがさくっと入りました。
- (写真左)こちらは、日牟禮八幡宮の境内のかたわらにある和洋菓子のシンボルゾーン「近江八幡日牟禮ヴィレッジ」。たねやさんのお茶屋やクラブハリエのお店があります。
- (写真中)中の「日牟禮カフェ」の『スコーン(540円)』※季節限定』。
- (写真右)この部屋はカフェの中のヴォーリズ建築の特別室で、一人500円(税込・要予約)で使えますよ、と店長の宮浦雄樹さん。