
宿毛「すくも」は四国の西南端にあり、桜の開花が全国どこよりも早いと言われています。
温暖な土地柄と、海や山、川の豊かな自然に囲まれた町。
一度訪れるとまた行きたくなる町として注目を集めています。
今回はその訳を探るドライブです。
宿毛市の南西に位置する「栄喜(さかき)漁港」。福良川河口にあります。岸壁からカマスやアジ、アオリイカ、チヌなども釣れ、太公望の人気のスポットです。のどかな漁港そのものですが、2010年に公開された映画『パーマネント野ばら』のロケ地になりました。
悠久の歴史を刻む町。気鋭の志がここから始まった。
宿毛市は、市の外れに宿毛貝塚があり3,4千年前の縄文時代には文化が開かれていたという歴史ある町です。当時の松田川河口は葦が生い茂る大湿原でした。古代の人が枯れた葦のことを“すくも”と言い、それが名前の由来と言われています。高知県の中でも早くから開け、明治以降多くの人材を輩出してきた町です。吉田茂元首相や早稲田大学の前身東京専門学校を創立した小野梓、吉田内閣で副総理を務めた林譲治など、その先見性や行動力で各方面に躍動しました。ちなみに豊ノ島関や間寛平さんも宿毛出身です。旧市街地には当時のお屋敷が残り風情を醸し出しています。「宿毛歴史館」では、そうした宿毛とゆかりのある人物や歴史などを模型やパネル、出土品など分かりやすく紹介しています。遍路路の高知県最後の札所も市内にあり、足摺岬を巡る遍路路はここから伊予愛媛へと続きます。お遍路さんや観光客が数多く訪れ今もその存在を際ださせています。
- (写真左・中)宴席の座興「はし拳」は、宿毛が発祥の地。2人が相対して3本ずつの赤箸を前面に突き出し、箸の合計本数(自分のものと相手のもの)を威勢よくリズミカルな調子で当てる競技です。「宿毛はし拳友の会」の三本義男会長(中央)、宿毛市商工観光課の山戸達朗さん(左)、大塚憲三さん(右)に体験させていただきました。市街地の商店街角に石碑があります。
- (写真右)高知県最後の札所「延光寺」は、神亀元年(724年)に行基が開基し、延歴14年(795年)に弘法大師(空海)が再興して第三十九番札所として定めました。このお寺には延喜11年(911年)のものである銅鐘が残っています。この鐘は、赤亀が鐘を背負い寺山に這い上がってきたと言われていて、これにちなんで山号を赤亀山としたという伝承が残っています。
- 仁王門をくぐると「大赤亀の石像」がお出迎え。龍宮城伝説を象徴していています。
- 本堂の右手に「眼洗い井戸」があります。大師は『宝医水』と名付け、眼の病気にも効くとされています。思わず眼の周りを浸しました。
- 山門正面には無人店舗があり、数珠やお線香のほか宿毛名物の『きんぼ(400円)』(写真)もありました。
- (写真左)「宿毛歴史館」は、宿毛の歴史と伝統を収集した暮らしと文化のデータボックスです。『宿毛の偉人21人』の似顔絵イラストの缶バッジ。来館するとお好きな人のものを一つプレゼント。
- (写真中)館内では江戸時代、城下町として栄えた宿毛の街並みを再現したジオラマを真上から眺められます。
- (写真右)「宿毛歴史館」の向かいにある宿毛の21人の内の二人、林有造・譲治邸。当時のお屋敷がそのまま残っています。
大自然の四季を感じる町。見るもの触れるものすべてに心踊る。
豊後水道に面した宿毛湾は、“魚のゆりかご・天然の養殖場”と言われるほど魚類の豊富な海です。一年中楽しめるチヌ釣りパラダイスであり、1,000種以上の魚が生息する日本有数のダイビングスポットとして知られています。松田川河口付近の岸壁からでも、フィッシングが楽しめます。渡船も数多くあり筏や磯に渡してくれます。大島の西の海上にある2つの無人島は「咸陽島(かんようとう)」です。昔宿毛に漂着した唐船の船頭が故郷を偲んで呼んだのが由来だそうです。夏には海水浴場として賑わいます。また、11月〜2月にかけて、この付近から見る「だるま夕日」は絶景です。松田川ぞいに町から少し北へドライブすると愛媛県との県境近くに出井渓谷があります。ここでは幅約40m、長さ約200mにわたり岩床に大小200ほどの甌穴が珍しい景観を作り上げています。美味しい食べ物、びっくりな歴史的人物、圧倒される自然美。やっぱりまた行きたくなります。
- (写真左)宿毛湾の冬の風物詩「だるま夕日」は「幸運の夕日」と言われており、「日本の夕日百選」にも選ばれています。
- (写真中・右)松田川の上流の出井渓谷に、急流でできる渦巻きが花崗岩を削ってできた「出井甌穴(いでいおうけつ)」。これほどたくさんの甌穴を見られるところは日本中でも珍しいです。
- (写真左)「道の駅すくも」にある公園下の道路から。こちらからもダイナミックな自然の景観が楽しめます。
- (写真中)大粒でだるま夕日のようにまん丸なものだけが選別された宿毛の特産品「だるま苺」。
- (写真右)「だるま文旦」は、宿毛文旦の中でも特に糖度が高く、酸度ともにバランスの取れたものだけを選別しています。
- (写真左)宿毛と大分を結ぶ佐伯・宿毛フェリーが片島岸壁から出航します。(写真円)この岸壁から投げ釣りでアオリイカやサビキ釣りでアジやカマスが釣れますと、釣り体験をさせていただいた観光協会の石原光訓さん。
- (写真右)これは「浜田の泊り屋」と言い、幕末から大正時代にかけて高知県西部の各地にあった泊り屋の一つです。泊り屋とは、未婚の若者たちが泊まり込み、夜間警備や祭りや集落の行事などの話合いが行われた場所。幡多地区には、かつて百数十カ所もありましたが、今はこの周辺に4カ所あるのみです。
- (写真左)宿毛港から道一本入ったところで見つけたお洒落なカフェ「イートリエル」さん。漁港の町の別世界のようです。ショップデザインをされているオーナーの息子さんがデザインしたそうです。
- (写真中左)手前からトマトクリームパスタ(900円)とチキンの香草焼(800円)。
- (写真中右)手前からスノーホワイト季節のフルーツパフェ(750円)とバニラアイスのメロンソーダ(550円)。
- (写真右)高い天井と大きな窓。気持ちのいい開放感です。
名物料理
宿毛のソウルフード 絶品のタレでいただく“焼肉”
これは、『焼肉』なのか『野菜炒め』なのかと思わず声が出そうな野菜たっぷりの焼肉をいただけるのは創業50年以上の「天下茶屋」さん。メニューは焼肉(牛肉か豚肉)のみ。鉄板に運ばれてきた出来立てをオリジナルのたっぷりのタレでいただくとご飯がどんどん進みます。
- 『高知家の食卓』県民総選挙2016で幡多エリア(高知県の西部)の第1位になったのが嬉しかったと、お店のお母さん花尾育子さん。牛肉(一人前)648円、豚肉(一人前)594円、大めし(270円)、中めし(216円)、小めし(140円)。
天下茶屋
住所/高知県宿毛市平田町戸内1869-6
お問合せ/0880-66-0541<
営業時間/11:00~18:30(日・祝日は19:00まで)
休業日/土曜日 ※ただしお肉がなくなり次第終了
地元料理
生きのいい店主が出す宿毛湾の絶品!旬の海の幸
獲れたての新鮮なお刺身と炭火焼料理で賑わう「一期一笑」さん。店主の山上翔さんは、なんと29歳。宮崎や福岡で修行を積み昨年6月にオープンしたばかりのお店です。メニューも豊富ですが、お客さんに頼まれれば旬の食材を活かした料理を出してくれます。
- 『ゾウリエビ』のお刺身をいただきました。身が引き締まって甘い!山上さんオススメの『土佐巻(1,200円)』やシメの『ピラフ(580円)』で大満足の夕食でした。
彩食や 一期一笑
住所/高知県宿毛市宿毛5340-10
お問合せ/0880-63-1661
営業時間/17:30~24:00(L.O.23:00)
休業日/月曜日
宿 泊
ココロもカラダもたっぷり癒される宿毛の特等席
- (写真左)デッキから夕焼けを背景にわら焼きしたてのカツオのたたき。奥の島は咸陽島。干潮時には地続きになり渡れます。
- (写真中)レストランデッキから幸運にも「だるま夕日」を見ることができ、感動しました。
- (写真右)館内の「和食処 椰子」で豪華な朝定食!ご飯は一釜ずつ炊き上げます。
- (写真左)四国初の“棚田状露天風呂”。寝転んで夕日を眺める幸せは、何物にも代えられません。
- (写真中左)希望があれば、わら焼き体験もさせていただけます。
- (写真中右)支配人の三松勝彦さんには、本当にご丁寧なアテンドをしていただきました。
- (写真右)上空から全館を望むとロケーションの素晴らしさが見て取れます。
今回のお宿は、大島の高台にある「宿毛リゾート 椰子の湯(やしのゆ)」。すべてのお部屋から足摺宇和海国定公園の宿毛湾が一望できます。元は国民宿舎でしたが昨年7月にリニューアルし洗練されたリゾート施設に生まれ変わっています。宿毛湾を眺めながらの露天風呂に浸れば日々の疲れが癒されること請け合いです。また、この地方名物の『だるま夕日』の撮影スポットとしても有名で、すぐ下の咸陽島(かんようとう)公園やデッキにはこの日も多くのカメラマンがファインダーを覗いていました。